他人名義の預金の差押えの可否

今回は、預金債権の差押え手続の中で、ご質問が多い事項についての話です。

司法書士 佐藤俊傑

他人名義の預金を差し押さえる場合の問題点

 債務者の預金(=預金債権)を差し押さえる場合、当然のことながら、その預金が債務者の責任財産でなければなりません。
 例えば、債務者名義(=債務者の氏名と同一の名義)の預金であれば、その外観から、当該預金は債務者の責任財産に属するとの一応の推定が働くので、適法に差押えをなし得ます。

 しかしながら、債務者が、通称や他人名義、はたまた全くの架空名義を用いて預金をしている口座の場合、差押えをすることができるのでしょうか?

 このような場合、その口座の外観からは債務者の責任財産とは認められないので、差押えをしたい債権者自らが、この預金は債務者の責任財産に属するということを証明しなければなりません。
 そして、裁判所も差押命令を発令するにあたりその点を慎重に判断します。そうしないと、全くの第三者である他人の口座を差押えてしまう危険があるからです。

口座名義が「旧姓」や「こと名」の場合

 全くの他人名義というわけではありませんが、実務上、次のようなケースが考えられます。

① 口座名義が、債務者の「旧姓」の場合
② 口座名義が、屋号(=こと名)の場合(例 ABC商店こと〇〇〇〇(=個人名))

 これらのケースについては、以前のコラム「債権執行の質問(預金編)」にQ&Aを記載してありますので、そちらを是非ご参照ください。

(補足)口座名義が通称等の場合

 個人が屋号(こと名)で開設している預金口座のケースと似ていますが、法人が通称等の名義で開設している預金口座があります。
 例えば、ゴルフ場運営会社が、経営するゴルフ場名「○○○カントリークラブ」名義で預金口座を開設している場合などです。

 この場合も、考え方は屋号(こと名)の場合と同じで、債権者が、債務者法人と通称等の繋がりを証明していくことになります。

債務者と預金名義が別人格の場合

 このケースが、一番ご質問を受けるケースです。

 すなわち、「債務者Aの個人名義の口座はほとんど預金額がない。しかし、債務者AはB会社を経営しており、会社名義の口座があるのでそれを差押えできるのか。」との質問です。

 まず、原則論から言えば、差押えは不可能です。債務者AとB会社は別人格だからです。
 そもそも「会社(=法人)を設立する」目的(効果)の一つは、「個人」と「法人」の財産を分離するということにありますので、ある意味当然の帰結です。

 ただ、多くの方が納得できないのは、「法人といっても債務者だけの一人会社であり、実体としては、両者は一体のものと考えられるはずだ。」という点です。

結局は、債権者が証明できるか否か

 債務者(A会社)・預金名義(B会社)ともに法人の事例ですが、このような判例があります。
 すなわち、「B会社名義の預金が、A会社の責任財産であること(A会社が出捐者であること等)を高度の蓋然性をもって証明した場合には適法に差押えができる」としました(東京高決平成14年5月10日)。

 この判例は、A会社とB会社との人的に密接な関係性、B会社のペーパーカンパニー性、B会社名義の預金口座の金員の出所等の総合的な事情から、B会社名義の預金であってもA会社の責任財産であると認めたものです。
 他人名義を利用することによる強制執行の潜脱(妨害)を許さない旨を示したもので、結論自体は至極妥当だと思われます。

 この理屈によれば、「債務者が個人A・預金名義が個人B」の場合や「債務者が個人A・預金名義が法人B」の場合なども同様に考えられるように思われます。

 ただ、実際のところ、その証明はなかなか難しいのではないでしょうか。
 特に後者(債務者が個人A・預金名義が法人B)のケースについては、執行手続では手続の安定性の面から、いわゆる「法人格否認の法理」の適用も判例で否定されている(最判昭和53年9月14日)ことからしても、その証明は非常に難しいのものと思われます。

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以 上

合わせて債権回収のページもご覧ください。

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