建物明渡しの強制執行1(執行の準備)

 今回は、建物明渡し訴訟後の強制執行手続についてご紹介していきたいと思います。

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司法書士 佐藤俊傑

 はじめに

 本コラムは、内容的にコラム「建物明渡請求の流れ」同コラム「その1」はこちら)の続きになります。
 前回で訴訟の話は終わり、今回から強制執行の話になるため、区切りの良さやネット検索の便宜を考慮してタイトルから一新しました。

強制執行の準備

 建物明渡し訴訟で勝訴判決を得たからといって、即、強制執行ができるわけではありません。強制執行の申立て前にいくつか準備する事柄があります。

1執行文付与の申立てをする

 強制執行をするためには、原則として、債務名義に執行文を付与してもらわなければなりません。実際に強制執行を担当する係は、債務名義の内容及び執行文を見て、強制執行の範囲や当事者などを確認します。
(債務名義とは、簡単に言うと、判決をはじめ和解調書、調停調書など強制執行ができる公文書のことです。これらをひっくるめて「債務名義」と言います。)

執行文の付与手続は、通常は難しくない。

 執行文の付与手続は、定型の申立書に必要事項を記入して、記名押印のうえ債務名義と共に提出すれば、5~10分で手続が完了します。申立手数料は収入印紙300円分です。

 債務名義の一番後ろに「執行文」というタイトルの紙がホチキス留めされて返還されます。

ただし、少々面倒ないし難解になるケースもある。

 例えば、「和解が成立して和解調書を作成したが、強制執行をするためには一定の条件が付されている場合」や、「一定の時期以後に被告が死亡しその相続人に対し強制執行をする場合」などです。

 上記の場合は、それぞれ「条件成就執行文」、「承継執行文」という特殊な執行文を付与してもらうことになります。
 その場合は、単に執行文付与の申立書を提出するだけでなく、それぞれ「執行できる条件が成就したこと」や「執行の相手方が承継(相続)したこと」などを裁判所に証明する必要があります。

 さらに言えば、和解調書上、強制執行をするための条件が付されていたとしても、その条件の内容によっては、証明が不要で、通常の執行文(「単純執行文」と言います)付与の申立てで足りる場合もあり、余計に話を難しくしています。

 ただ、実務の中ではほとんどが単純執行文で足りるケースなので、それほど心配することはありません。例外があることを覚えておいていただければと思います。

2送達証明書を取得する

 送達証明書とは、被告(=強制執行の債務者)に対し、債務名義がいつ送達されたかを証明する文書です。

 民事執行法29条前段に「強制執行を開始するためには、債務名義の正本(又は謄本)が、強制執行の開始に先立って(又は同時に)、債務者(=被告)に送達されていなければならない」とあるため、強制執行の申立てをする際は、送達証明書を添付しなければならないのです。

 この規定は、強制執行が債務者(=被告)にとって不意打ちにならないようにとの趣旨から認められたものですが、債務名義の種類によっては少々注意が必要です。

 どういうことかと言うと、判決の場合は、被告に対し裁判所が職権で送達手続をしてくれますが、和解調書や調停調書の場合は、当事者から送達申請がないと送達をしてくれない建前になっています(職権で行う規定がないからです。)。

 担当が気の利いた書記官であれば、和解等の成立時に送達手続について確認してくれると思いますが、そうでない場合は、忘れずに自分から送達申請(口頭でも可)をしておくことが大切です。当然のことですが、そもそも送達をしていなければ送達証明書をとることができないからです。

送達証明書の申請手続も難しくない。

 定型の申請書を記載して記名押印のうえ提出すれば、5~10分で手続が完了します。裁判所書記官が証明文言を付した証明書を交付してくれます。

 なお、債務者(被告)が1名であれば、申立手数料は収入印紙150円分ですが、複数の債務者(被告)について送達証明書の申請をする場合は、申請の仕方や取扱いによって金額が変わってくる場合があります。

「条件成就執行文」「承継執行文」が付与されるケースのときは注意。

 これらの場合は、付与した当該執行文の謄本及び執行文付与申立ての際に提出した証明文書の謄本も、強制執行の開始に先立って(又は同時に)、債務者(=被告)に送達されていなければならないことになっています(民執法29条後段参照)。
 よって、債務名義の送達証明書を取得する他に、これらの文書の「送達申請」及び「送達証明書申請」が必要になってくるのです。もちろん、手続が多い分,通常より費用もかかることになります。

 ここまでくると、複雑すぎてよくわからなくなってくると思います。
 ただ、前述したように条件成就執行文や承継執行文の付与自体が例外的なので、それほど心配する必要はありません。万一こういったケースに当たってしまった場合には、司法書士などの専門家にご相談・ご依頼いただければと思います。

3執行文付与や送達証明申請ができる時期を確認する

 送達証明書は、債務者(被告)に対し債務名義が送達されたことを証明するものですから、送達後でなければ当然取得できません。いつ送達できたのかは、裁判所からわざわざ連絡はくれませんので、頃合いを見て電話等で確認するしかありません。

 執行文の付与も、債務名義の内容によって付与が可能な時期が変わってきます。
 判決であれば仮執行宣言の有無、控訴されたか否かなどによって、和解調書であれば和解条項の内容によって変わってきます。もう付与できる時期か否かは形式的な話なので、その点は裁判所も電話にて回答してくれるはずです。

流山パーク司法書士事務所にご相談ください

 建物明け渡しの手続は、時間も労力も非常にかかる手続です。任意の交渉から始まり、保全・訴訟・強制執行と様々な手続を駆使する必要もでてきます。
 当事務所では、こういった裁判所に提出する書類の作成は勿論のこと、建物明け渡しという最終的な目的達成まで様々なお手伝いをすることができます。

 少しでもご心配な点があれば、まずは当事務所にご相談ください。当初のご相談は無料で時間制限なく行っていますのでお気軽にお問い合わせください。ご連絡お待ちしております。

以 上

 コラム「建物明渡しの強制執行2(債務者の範囲)」はこちらからどうぞ。合わせて建物明け渡し・滞納賃料回収のページもご覧ください。

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