証拠がない場合の訴訟提起

 今回は、裁判をするにあたり、自分の主張を裏付ける証拠がない(又は少ない)場合の話です。今回のコラムは少々法律用語が多いですが、最後までご覧いただけたら幸いです。

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司法書士 佐藤俊傑

証拠がない

 例えば、Xから、「Yに貸した金100万円を返してほしい」旨の相談を受けたとします。このような場合、相談の過程で次のような事情が判明する場合があります。

① Y(借主)は、昔からの知人なので、貸す際にわざわざ契約書(または借用証)は作成していない。 
② Yからは、100万円のうち数万円だけ弁済を受けたことがあるが、正確な日付や金額がわからない。領収書の作成もしていない。

  さて、このような事例において、XがYに対して貸金返還訴訟を提起する場合、訴状には、
「原告は、被告に対し、平成27年8月1日、弁済期を平成28年8月1日として金100万円を貸し付けた。」
などと記載します。当然のことながら、まずはお金を貸した事実を記載します。

 ただし、貸した証拠がない。訴訟はできるのでしょうか?勝訴できるのでしょうか?

自白の拘束力

 裁判では、請求する内容(類型)によって、訴訟提起した者(=原告)が主張・立証しなければならない事柄が決まっています。

 前述の貸金返還請求を例にとると、「主張」しなければならない事実(=「主要事実」と言います。)は、

①消費貸借契約の成立の事実(金銭の返還の合意、金銭の交付) 
②消費貸借契約の終了の事実(返還時期の合意、返還時期の到来)

についてです(利息・損害金等も請求する場合は変わってきます。)

 ただし、これらの事実を被告がすべて認めた場合、原告はそれを「立証」(証明)する必要はありません。不利益を被る被告が認めているのだから、事実もそのとおり間違いないのだろうということです。
 これが「裁判上の自白」ないし「自白の拘束力」と言われるものです(民訴§179)。よって、このような場合は証拠がなくても勝訴できることがあります。

間接事実と間接証拠

 では、被告が「借りた事実はない。」などと、原告の主張を認めなかった場合はどうでしょうか?

 この場合は、原告が前述の主要事実を証明する必要があります。証明できなければ裁判は負けです。
 ただ、実際の裁判では、端的に主要事実を認定しうる直接的な証拠(=直接証拠)がある場合はそれほど多くありません。
 主要事実の存否を推認するのに役立つ事実である「間接事実」の主張・立証を積み重ねていくことによって、主要事実の存否を認定していくというプロセスをとることが多いところです。

 前述の例で見てみましょう。

 金銭の貸し借りの事実の存否(消費貸借契約の成否)が争点となっている場合、借用証書などの直接証拠がないときには、「本件契約が成立したとされる直前ころは被告が生活に困窮していたこと、それにもかかわらず、その直後に被告は金回りが良くなり、高価品を購入したこと。」などの間接事実を主張・立証することにより、金銭授受を推認することがあり得ます。

 すなわち、経験則上、「生活に困窮していた者があるとき急に羽振りが良くなって高価品を購入した場合、通常、その時期に何らかの金銭収入があった可能性が高い」ということが推認できるからです。

 もう一つ別の例を示します。

 被告がAに対して代理権を授与した事実の存否が争点となっている場合、この事実を直接立証する証拠がないとき(=例えば委任状がない。)には、「過去の同様の取引において、被告は毎回Aに代理権を授与していた。」という間接事実を立証することができれば、被告は今回の取引においてもAに代理権を授与したものと推認される可能性があると言えます。

抗弁

 最後に、被告から数万円の弁済を受けていた事実についてはどうするのでしょうか?

 細かい説明は省略して結論だけ述べると、貸金返還請求において、被告が弁済(一部弁済)した事実は、原告が主張・立証しなければならない事実ではありません。そのため、この点について証拠がないことは原告側の問題にはなりません。

 普通に考えてみれば、被告側が「弁済した」事実を証明することは可能ですが、原告側が「弁済を受けていない(受領していない)」事実を証明することは出来ません。「ないものはない」からです。

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以 上

本コラムに関連して、以下のコラムもご覧いただけると幸いです。

コラム「裁判にはどのような証拠を出せばよいですか?」
コラム「裁判で提出される一般的な証拠書類」

 前者は、主に書証の証拠能力や証明力について、後者は各種訴訟で提出される典型的な証拠についてそれぞれご紹介しています。

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