建物明渡請求の流れ2(任意交渉・即決和解)

 前回に引き続き、建物明渡請求の流れをご紹介していきたいと思います。 その1からご覧いただければ幸いです。

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司法書士 佐藤俊傑

建物明渡し手続の流れの確認

①催告・解除の意思表示 → ②任意の明渡し・即決和解 → ③民事調停 → ④占有移転禁止の仮処分 → ⑤建物明渡訴訟 → ⑥強制執行

 今回は、「②任意の明渡し・即決和解」の部分の話になります。
 事案により、手続が前後したり不要な手続があることは以前に述べたとおりです。

任意の明渡し

 未払い賃料の処理を含めて、任意で明渡しの合意ができるのであればそれに越したことはないです。話し合いの末、新たに連帯保証人をつける等して、賃貸借契約を継続する旨の合意ができる場合もあります。

 しかしながら、当事者間で合意内容を書面化しただけでは、その合意が守られなかったときに結局裁判からやり直すことになってしまいます(勿論、合意書面は裁判の証拠にはなります。)。

公正証書の作成 

 そこで一つの方法として、合意した内容について公正証書を作成することが考えられます。新たな条件で賃貸借契約を継続するときは、その賃貸借契約書自体を公正証書で作成することになります。

 公正証書のメリットは、法律に詳しい公証人の面前で内容を確認して作成されるので、法律的に問題のない合意書面が作成できることと、合意した義務をきちんと履行しようとする心理的効果が期待できることでしょう。

 ただし、合意が守られなかったときに1点注意が必要です。
 公正証書によって合意(和解)が成立しても、金銭債権以外の債権は、その公正証書によって強制執行ができないことです(民事執行法22条5号)。
 すなわち、賃料は金銭債権なので、滞納分を回収するにあたり当該公正証書に基づいて強制執行ができます。別途裁判をする必要はありません。

 しかし、主たる請求である建物の明渡しについては、金銭債権ではないので公正証書に基づいて強制執行ができません。判決など別のお墨付きが必要になってきます。この点が公正証書のデメリットになります。

訴え提起前の和解(即決和解)

 公正証書のデメリットを克服する方法として「訴え提起前の和解」があります。実務では即決和解(そっけつわかい)と言う方が多いかもしれません。

 即決和解とは、民事上の紛争のある当事者間において、おそらく合意ができるであろう事項について、簡易裁判所に和解の申立てをし、裁判所をとおして和解(合意)をする手続です(民訴法275条)。

 この申立てがあると、裁判所において合意内容や当事者の意思を確認し、合意事項を和解調書としてまとめます。この和解調書があれば、相手方に債務不履行があった場合、別途裁判をしなくても、金銭の請求だけではなく建物の明渡しを求めることも可能になります。
 即決和解の手続は原則として1回の期日で終了し、申立手数料は合意内容にかかわらず一律2000円と高くありません。

 ここまで述べてくると、即決和解は言いこと尽くめの手続のようですが、実際のところ、即決和解は思ったほど利用されていません。平成26年度の司法統計を見ても、全国の簡易裁判所の通常訴訟が約32万件もあったところ、即決和解は約3100件のみでした。

 いくつか考えられる理由はありますが、1つは「即決」と言っても、申立てをしたその場で和解調書が作成されるわけではなく、1か月ほど先の出頭期日が指定されることが多いことです(場合により、それ以上先の期日が指定されることは後述のとおり。)。
 これにより、他の手続と比較した場合の時間的なメリットは小さくなります。
 
 もう1つは、先ほど「おそらく合意ができるであろう事項について」申立てをすると記載しましたが、実務では、「別紙和解条項のとおりの和解を求める。」として申立てをするのが通常です。

 すなわち、即決和解の申立て後に裁判所で詳細を話し合うのではなく、申立ての段階ですでに当事者間にほぼ完全な合意ができており、かつ、その合意に基づく法律的に問題のない和解条項案が作成されていることが求められているのです。

 そのため、そこまで合意ができているケース自体が少ないこともさることながら、専門家に依頼せずに個人の当事者間で即決和解を利用される方はあまりいないのが実際のところです。

 こういったところが即決和解の利用があまり進まない理由に挙げられるでしょうか。
 ただ、一定のメリットがあることは間違いない制度ですので、その辺りをよく理解した専門家に相談することが大切だと思います。

(補足)即決和解の期日指定

 即決和解の利用件数が多くないことは、裁判所側の態度によるところもあります。

 前述のとおり、即決和解は、裁判をせずに簡便に強制執行のお墨付き(=債務名義)を得られること、原則1回で終わること、さらには当事者間に合意があれば原則として全国どこの簡易裁判所でも申立てができることなどから、制度の悪用が指摘されています。

 すなわち、例えば、債権者がその立場の強いことを利用して、強制的に即決和解をすることが考えられます。相手方の白紙委任状を利用して、双方代理や無権代理が行われる可能性や替え玉出頭の可能性なども指摘されています。

 実際、裁判所勤務時代にも、そこらじゅうの簡易裁判所に電話をかけ、少しでも早く期日が入る(=すなわち、少しでも早く債務名義が得られる)裁判所を確認している金融業者などがいました。
 そのため、裁判所では、即決和解の不正利用を防ぐ意味からも、あえて相当程度先の日付を和解期日予定日と答える場合もありました。通常の裁判をするよりも日数がかかるのであれば、即決和解をする意味がないからです。
 こういった裁判所の即決和解に対する消極的態度も利用件数の少なさに繋がっているのではないでしょうか。

流山パーク司法書士事務所にご相談ください

 建物明け渡しの手続は、時間も労力も非常にかかる手続です。任意の交渉から始まり、保全・訴訟・強制執行と様々な手続を駆使する必要もでてきます。
 当事務所では、こういった裁判所に提出する書類の作成は勿論のこと、建物明け渡しという最終的な目的達成まで様々なお手伝いをすることができます。

 少しでもご心配な点があれば、まずは当事務所にご相談ください。当初のご相談は無料で時間制限なく行っていますのでお気軽にお問い合わせください。ご連絡お待ちしております。

以 上

 建物明渡請求の流れ3はこちらからどうぞ。合わせて建物明け渡し・滞納賃料回収のページもご覧ください。

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