建物明渡請求の流れ5(仮処分の申立て)

 前回に引き続き、建物明渡請求の流れをご紹介していきたいと思います。その1から順を追ってご覧いただければ幸いです。

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司法書士 佐藤俊傑

建物明渡し手続の流れの確認

①催告・解除の意思表示 → ②任意の明渡し・即決和解 → ③民事調停 → ④占有移転禁止の仮処分 → ⑤建物明渡訴訟 → ⑥強制執行

 今回は、「④占有移転禁止の仮処分」の話の2回目になります。

 占有移転禁止の仮処分の申立て

 保全命令の申立ては、「申立ての趣旨」並びに「保全すべき権利又は権利関係」及び「保全の必要性」を記載することになっています(民保法13条1項)。

1 申立ての趣旨

 申立ての趣旨は、仮処分の申立てによって求める結論部分のことです。そのまま仮処分命令の命令文言になります。占有移転禁止の仮処分の申立ての趣旨は定型化しており、一般的には次のとおりです。

  債務者は、別紙物件目録記載の物件に対する占有を他人に移転し、又は占有名義を変更してはならない。

 債務者は、上記物件の占有を解いて、これを執行官に引き渡さなければならない。
 執行官は、上記物件を保管しなければならない。
 執行官は、債務者に上記物件の使用を許さなければならない。
 執行官は、債務者が上記物件の占有の移転又は占有名義の変更を禁止されていること及び執行官が上記物件を保管していることを公示しなければならない。

  難しいことを言っているように見えますが、要は、

 債務者(=賃借人)は、誰かに占有(又は占有名義)を移転してはならない。
  (理屈では)執行官が当該物件を占有・保管することになるが、そのまま債務者が使用することを許すこととする。
  執行官は、前記①と②の事実を公示すること。

 と言っているのです。

 これがほとんどのケースに該当する原則型の命令になります。

 あくまでその後の建物明渡訴訟で決着がつくまでの保全手続ですので、賃借人はそのまま建物に居住を続けることができ、賃貸人は、建物明渡訴訟の勝訴判決により建物の明渡しを求めることができることになります。

 ただし、そのまま債務者に使用させると建物を毀損するおそれがあるなどの事情がある場合は、債権者(賃貸人)に使用を許す決定や、債権者にも債務者にも使用を許さない決定もありえます。その場合は、上記の申立ての趣旨4の文言が変更ないし不要となります。

2 保全すべき権利又は権利関係(被保全権利)

  「被保全権利」という耳慣れない言葉ですが、そもそもこの占有移転禁止の仮処分は何のためにするのか、この仮処分をすることによって守りたい権利は何なのかという話です。

 なぜ占有移転禁止の仮処分をする必要があるのか 

  建物明渡訴訟中に賃借人が占有を移転してしまうおそれがあるから
  なぜ訴訟中に占有移転されては困るのか
  判決を取っても賃借人に対する建物明渡しの執行ができなくなるから
  この仮処分をしておけば、賃借人に対して建物明渡しができる

 そうだとすると、結局、占有移転禁止の仮処分によって守られる権利、すなわち保全される権利(=被保全権利)は「建物明渡請求権」ということになります。
 より正確に言えば、「賃貸借契約の終了に基づく返還請求権としての建物明渡請求権」となります。

 被保全権利の特定ができたら、その発生を基礎づける事実を記載しなければなりません。賃貸借契約の成立から滞納・催告・解除の意思表示等、個々の事案ごとに日時や金額等を特定した具体的事実を記載していくことになります。

3 保全の必要性

 占有移転禁止の仮処分をする必要性は、その求める仮処分の内容により要求される程度が変わってきます。

 例えば、前述したように、この仮処分は保全手続とはいえ債務者に建物の使用を許さない旨の命令をすることもできます。その場合は、債務者(賃借人)に対する不利益が非常に大きいですので、その分保全の必要性もより強度のものが要求されることになります。

4 申立て費用

 申立て費用は、申立手数料(収入印紙)が2000円、郵便切手が数千円です。
 手数料は当事者の数などにより、郵便切手は裁判所により変わってきますので、事前に確認が必要です。

5 担保

 上記申立て費用とは別に担保が必要です。仮処分命令は、原則として担保を積むことを条件として発令されます。

 担保は、仮処分命令が不当(違法)であった場合に債務者が被る損害を考慮して事案ごとに決められます。
 裁判所が公開している基準はありませんが、債務者の使用を許す一般的な仮処分命令の場合、不動産の価格の1~5パーセントほど、適正賃料の3~6か月分程度の金額と言われています。
 これは、その建物が居住用か事業用かによっても変わってきます。また、債務者の使用を許さない仮処分の場合は、それだけ債務者の被る打撃が大きいので、相当高額の担保となることが予想されます。

 さらに言えば、被保全権利の疎明の程度も影響します。すなわち、被保全権利の疎明が高いほど、言い換えれば、訴訟で勝訴する可能性が高いほど担保金額は安くなります。これも債務者に与える影響との関係のためです。

次回に続く

 占有移転禁止の仮処分は、裁判所から仮処分命令が出たら一件落着ではありません。執行官に対して、保全執行の申立てをしなければなりません。次回は保全執行についてご紹介していきます。

流山パーク司法書士事務所にご相談ください

 建物明け渡しの手続は、時間も労力も非常にかかる手続です。任意の交渉から始まり、保全・訴訟・強制執行と様々な手続を駆使する必要もでてきます。

 当事務所では、こういった裁判所に提出する書類の作成は勿論のこと、建物明け渡しという最終的な目的達成まで様々なお手伝いをすることができます。

 少しでもご心配な点があれば、まずは当事務所にご相談ください。当初のご相談は無料で時間制限なく行っていますのでお気軽にお問い合わせください。ご連絡お待ちしております。

以 上

 建物明渡請求の流れ6はこちらからどうぞ。合わせて建物明け渡し・滞納賃料回収のページもご覧ください。

 

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