行方不明者がいる場合の遺産分割協議

 今回は、遺産分割協議をする際に、相続人の中に行方不明者がいる場合を例に、「不在者財産管理人の選任」の制度についてご紹介したいと思います。

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 司法書士 佐藤俊傑

不在者財産管理人選任の制度概要

 不在者財産管理人選任の制度とは、「不在者(=従来の住居所を去り、容易に戻る見込みのない者)」の財産を管理する者がいない場合に、利害関係人等からの申立てにより、家庭裁判所が財産管理人を選任するものです。

 利害関係人とは、「法律上の利害関係」のある者のことです。
 後に述べる遺産分割手続における共同相続人が代表例ですが、その他にも、不在者に対する債権者、不在者所有の土地との境界確定を求める隣地所有者、不在者所有の土地を買収しようとする都道府県などが挙げられます。
 あくまで法律上の利害関係が必要ですので、生死不明の不在者を心配する単なる知人友人は含まれません。
 選任された不在者財産管理人は、不在者の法定代理人として、不在者の財産を管理・保存するほか、家庭裁判所の許可を得たうえで、不在者に代わって遺産分割や不動産の売却手続などを行うことができます。

(具体的な利用例)遺産分割協議

 不在者財産管理人の制度は、実務上は、遺産分割協議をする際に利用されることが非常に多くなっています。

一部の相続人のみで行われた遺産分割協議は無効

 遺産分割協議は相続人全員で行わなければならず、一部の相続人のみで行っても無効です。

 「相続人全員で行う」ということは、同じ場所に一堂会して話し合いをしなければならないということではありません。最終的に合意した内容について、相続人全員の真意が確認できる必要があるということです。
 相続人全員の真意の確認は、口頭や電話等での確認などその方法手段は問いません。
 ただし、実務上は、遺産分割協議が成立したことの証拠としたり、各種相続手続に利用するために、書面(=遺産分割協議書)を作成し、それに相続人全員が署名及び実印で押印することでその真意を確認するのが通常です。

相続人の中に行方不明者がいる場合

 さて、遺産分割協議を相続人全員で行う必要があるとなると、相続人の中に行方不明者がいる場合には遺産分割協議ができなくなってしまいます。

 そのような場合、他の相続人は、家庭裁判所に申立てをして、その行方不明者に代わって同人の財産を管理する「不在者財産管理人」(立場としては、行方不明者の法定代理人)を選任してもらいます。そうすると、その不在者財産管理人を交えて遺産分割協議をすることが可能になります。
 実際に遺産分割協議を成立させるためには家庭裁判所の許可が必要ですが、そもそも協議すらできないという状況を脱することができるのです。

不在者財産管理人選任の申立てに当たっての注意点

1 ここでは行方不明者を例に挙げましたが、どのくらいの期間行方不明であれば不在者と認められるかなど明確な基準はありませんので、具体的事情によります。

2 遺産分割協議のために本申立てをする場合、他の相続人は利害関係があるため申立人にはなれます。しかしながら、不在者と利害が相反しますので財産管理人にはなれません。

3 申立ての際,申立書に管理人候補者を記載することができます。
 不在者の近親者等を候補者として、そのまま裁判所で選任される場合も少なくありませんが、事案によっては、裁判所の判断により司法書士等の専門職が管理人とされることもあります。

4 財産管理人の報酬など、不在者の財産管理にかかる費用は、原則として不在者の財産から支出することになります。
 流動資産が少ない等、不在者の財産からの支払が見込めない場合は、申立人が相当額を予納する必要が出てきます。予納額は具体的事案によりますが数十万円程度かかることもあります。

5 不在者財産管理人は不在者の財産全般を管理する者です。そのため、当初の選任の目的が遺産分割協議のためであっても、遺産分割協議後に不在者の財産が残存していれば、管理人はその後も管理業務を継続する必要があります。

失踪宣告との関係

 行方不明の相続人がいる場合、もう一つの解決手段として「失踪宣告制度」があります。

 これは、原則7年以上行方不明であれば、家庭裁判所に申立てをして、行方不明(=失踪)時から7年経過したときをもって、その行方不明者は死亡したものとみなされる制度です。
 これにより、他の相続人は、行方不明者の相続人を相手にして遺産分割協議をすることになります。

 前述5に記載したとおり、不在者財産管理人に選任された者は、長期間にわたって財産管理をする必要が出てくる場合もあります。一方で、失踪宣告制度には、原則7年以上という期間制限や、行方不明者が死亡したものとみなされてしまうことへの親族の心理的抵抗などもあります。
 こういったメリットデメリットをよく検討したうえで不在者財産管理人制度との使い分けをするべきでしょう。

 なお、不在者財産管理人を選任した後に、失踪宣告制度を利用することもできます。
 財産管理人は、失踪宣告により不在者の死亡の効果を発生させ、その相続人へ管理財産を引き継ぐことにより管理業務を終結させる方法もあります。

流山パーク司法書士事務所にご相談ください

 当事務所では、上記「不在者財産管理人の選任申立て」をはじめ、「失踪宣告の申立て」などの家庭裁判所の各種手続、並びに「遺産分割協議書の作成」、「遺産分割に伴う不動産の登記手続」など相続に関する問題解決に向けて幅広くお手伝いをすることができます。

 初回相談は無料で時間制限なく行っていますので、少しでもご心配な点があれば、まずは当事務所までお気軽にお問合せください。ご連絡お待ちしております。

以 上 

合わせて相続・遺言のページや、相続や遺言の手続について当事務所が出来ることをまとめた「相続・遺言特設ページ」も是非ご覧ください。

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