債権執行の質問(預金編)

 今回は、債権執行についてよくある質問「預金編」です。預金の差押えについての質問をまとめてみました。
 手続全般の質問と回答は、コラム「債権執行の質問(手続全般編)」をご覧ください。

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司法書士 佐藤俊傑

債権執行の質問(預金編)

1 預貯金の差し押さえをする場合、申立ての際どこまで調べておく必要があるのか?

 まず、債務者の口座があると思われる金融機関とその支店を調査する必要があります(ゆうちょ銀行の場合は、支店ではなくどこの貯金事務センターの扱いかを調べる必要。)。
 口座番号の特定までは不要です。口座番号まで特定しなければならないとすると、差押えをすることがほとんど不可能になってしまいますので、そこまでは必要ありません。

 次に、金融機関は、預金を支店(貯金事務センター)ごとに管理しているため、差押命令は当該支店あてに送達することになります。
 そのため、申立書には、第三債務者の金融機関名、本店所在地及び代表者氏名のほか、支店名とその所在地の記載が必要になります。
 支店名とその住所については、間違えて記載をすると差押えの成否に影響が出てくることもありますので、正確に記載することが大切です。

 なお、第三債務者である金融機関は法人ですので、法人登記の登記簿謄本(全部事項証明書)を提出する必要があります。

2 債務者の「前住所」や「旧姓」で開設されている預貯金口座は差し押さえることができるのか?

 債務名義に記載された住所・氏名と前住所や旧姓の繋がりを証明できれば、差押えをすることができます。この場合の証明文書としては、前住所等の記載された住民票や戸籍謄本、戸籍の附票などの公文書が原則として必要です。

3 債務者Aが、「B商店」という屋号で自営業をしている場合、被告を「B商店ことA(個人名)」とする債務名義があれば、これで「B商店」名義の預金を差し押さえることができ
 るのか?

 被告の氏名として「B商店こと A」という記載のある債務名義に基づいて預貯金を差し押さえる場合、原則として、「A(個人名)」名義の口座の差押えができるのみです。
 「B商店」名義の口座の差押えが認められないのは、A以外の別人の預金である可能性(単なる屋号のため、A以外の者が使用している可能性)があるためです。

 ただし、裁判の中で、両者のつながり(同一性)について実質的な判断が示されていたり、執行手続の中で、債務者Aが「B商店」という名称で営業をしていることや、「B商店」名義の特定の口座が債務者Aのものであることについて、具体的に証明ができれば例外的に差押えが認められる場合もあります。

4 月末など特定の日付で預金を差し押さえることはできるのか?

 預貯金に対する差押えは、差押命令が第三債務者の当該支店に送達された時点の預金残高に対して効力が生じます。そのため、例えば、債務者の給与や売掛金の入金が毎月25日頃振り込まれると判明している場合、預金残高が一番増えるその日を狙って差押えをしたいと債権者は考えることがあります。

 一般的に、特定の日付で郵便物を送付したい場合は、郵便局の「日付指定郵便」という方法がありますが、第三債務者に送達する差押命令にその方法を利用できるかどうかは、裁判所ごとの取り扱いになります。

 日付指定郵便は、時間指定まではできませんし、指定が可能な配達日は、発送日の翌々日から10日間の間と限定されています。そうすると、あまり差し迫った時期に申し立てをすると、裁判所の繁忙度により、申立ての審査等で配達希望日に間に合うように差押命令の発送ができなくなる場合もあります。
 よって、日付指定で差押えをしたいと考える場合には、あらかじめ申立て先の裁判所に問い合わせをしておいた方が無難です。

5 債務者の口座が明確にわからないため、口座があると予想される複数の金融機関(又は複数の支店)に対して、同時に差押えをすることはできるのか?

 同じ金融機関の複数の支店や、別の金融機関のそれぞれの支店などについて、同時に差押えをすることができます。

 しかし、債権者は、自己が回収できる金額を超えて差押えをすることはできないので、差押え金額を各支店ごとに割り付ける必要があります(超過差押えの禁止。民事執行法146条2項)。

 例えば、債権者が、債務者に対して50万円の支払を命ずる債務名義を持っているとします。
 このとき、A支店、B支店の二つの支店について差押えをする場合には、A支店に30万円、B支店に20万円というように、合計で請求額50万円になるように差押え金額を分配しなければなりません(なお、話が複雑になるので執行費用の話は除きます。)。
 同時に差押えをする支店が3か所以上になっても考え方は一緒で,あくまで上限は請求額50万円です。

 どの支店にいくらずつ割り付けるかは債権者の自由ですが、それによるリスクも債権者が負うことになります。
 どういうことかと言うと、上記の例で、差押え時の実際の預金残高は、A支店が10万円、B支店が100万円だったとします。

 しかしながら、各割付額の範囲内で差押えの効力が生じるため、債権者が回収できるのは、A支店の10万円、B支店の20万円の合計30万円のみということになります。B支店の預金にはまだ残金があるにもかかわらず、そこから回収することはできないのです。

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以 上

合わせて債権回収のページもご覧ください。
コラム「債権執行の質問(手続全般編)」はこちら
コラム「債権執行の質問(給料編)」はこちら
コラム「債権執行の質問(執行費用その他編)」はこちら

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