自筆証書遺言の作成ルール

 今回は、自筆証書遺言について、その作成ルール(方式や形式面のルール)の注意点をご紹介していきたいと思います。

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司法書士 佐藤俊傑

 以前に、「公正証書遺言の作成のすすめ」というコラムの中で、「自筆証書遺言の作成の注意点・デメリット」を概括的にご紹介しました。
 今回は、自筆証書遺言の作成ルール(方式や形式面のルール)について、もう少し詳しくお話ししていきます。

 遺言の要式性

 民法は、「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。」としています。このように、方式が決められた法律行為のことを「要式行為」と言いますが、遺言を要式行為としたのは、遺言自体がもつ性質によります。

 すなわち、遺言は遺言者の死亡後に効力を生ずるので、遺言者に真意を確かめることができません。そこで、遺言の作成について一定の厳格な方式を要求し、その方式に従って作成することにより、遺言者の真意が明確になり(複数の解釈が生まれない)、後日の紛争を防止することにつながるのです。

 しかし、一方で、あまりに厳格な方式を要求すると、せっかく遺言をしてもわずかな方式違背で遺言が無効になってしまいます。これでは死者の最終意思を尊重するという遺言制度の趣旨にも合致しません。
 そこで、判例は、遺言の方式が問題になった場合、方式に関する民法の規定を緩やかに解釈して、なるべく遺言者の真意を活かせるよう調和を図ってきました。

判例の紹介

 まずは、自筆証書遺言の作成ルールついて規定した民法の条文を掲げておきます。


(民法968条 自筆証書遺言)

1項 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名自書し、これに印を押さなければならない。
3項 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。(一部省略して記載)

 では、上記条文を基本ルールとして、判例(及び通説的見解)は、遺言の方式違背について具体的にどのように考えているのでしょうか。以下、自筆証書遺言の方式の違背によって遺言の有効無効が問題になった事例の要旨をいくつかご紹介します。

自書について

1 運筆について他人の添え手による補助を受けてされた遺言は、
①遺言者が証書作成時に自書能力を有し、
②他人の添え手が、単に始筆、改行、もしくは字の間配りや行間を整えるため、遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするために支えを借りただけであり、かつ、
③添え手をした者の意思が介入した形跡のないことが筆跡の上で判定できる場合には、「自書」の要件を満たす。

2 カーボン紙を用いて複写の方法で記載されたものも「自書」にあたる。

3 ワープロやタイプライターを用いたものは無効である。

押印について

1 押印は、実印であることを要せず、認め印や指印でもよい。

2 1通の遺言書が数枚にわたる場合、その間に契印・編てつがなくても、その数枚が1通の遺言者として作成されたものであることが確認できれば有効である。

日付について

1 日付を欠くもの、明確でないものは無効である。年月だけで日の記載がないもの、年月の下に「吉日」とだけ記載されているものは無効。

2 証書に記載された日付が(誤記により)真実の作成日付と相違しても、それが誤記であること及び真実の作成日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、その日付の誤りをもって遺言を無効としない。

氏名について

 単に氏又は名を自書するだけでも、本人が特定でき他人と混同が生じない場合は有効である。ペンネームや芸名なども同様である。

加除その他の変更

 証書の記載自体から見て明らかな誤記の訂正については、その訂正方法について方式の違背があっても、遺言は有効である。

つまるところ、慎重に

 自筆証書遺言の方式違背に関する判例は、上記の他にもたくさんあります。最近では、最高裁が遺言者の花押(かおう)を印と認めないという判断をしました。

 自筆証書遺言は、費用がかからず、周囲にも秘密裡に簡便に作成できるなど利点もあります。が、作成することによって、かえって死後に相続人間の揉め事の種とならないよう慎重に作成することが求められます。

補足:法律の改正等について

法務局における遺言書の保管等に関する法律について

 「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立、2020年7月10日から施行されます。
 同法は、相続をめぐる紛争防止の観点から、法務局において自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度です。この制度によって法務局に保管されている遺言書については、 遺言書の検認が不要になります。

自筆証書遺言の方式緩和

 民法等の改正により、自筆証書遺言の方式が緩和されます。2019年1月13日からこの扱いが始まります。  
 自書を要する自筆証書遺言について、それに添付する財産目録については自書でなくてもよいものとされます(パソコン等の利用可)。ただし、財産目録の各頁に署名押印することを要する扱いとなります。 

流山パーク司法書士事務所にご相談ください

 当事務所では、遺言書の作成について、事前の法律相談はもちろんのこと、自筆証書遺言や公正証書遺言の文案の作成から公正証書遺言の公証人との打ち合わせまで幅広くお手伝いをすることができます。
  初回相談は無料で時間制限なく行っていますので、お気軽にお問合せください。ご連絡お待ちしております。

以 上

合わせて相続・遺言のページや、相続や遺言の手続について当事務所が出来ることをまとめた「相続について、司法書士に相談・依頼できること」も是非ご覧ください。

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