強制執行をするためにかかる費用と手間

  更新日2018年12月12日

 今回は、金銭を回収するための強制執行手続について、費用や手間の観点からご紹介していきたいと思います。

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司法書士 佐藤俊傑

 強制執行の必要性

 貸したお金を返せと請求する「貸金返還訴訟」で勝訴したにもかかわらず、相手方(債務者)は一向にお金を支払わないことがあります。
 このようなときは、いつまで待っていても裁判所は何ら手助けをしてくれませんので、自ら強制執行の申立てをして貸金を回収しなければなりません。

まずは、何に対して強制執行をするか決める

 前述のように、「裁判で勝ったのに債務者が支払いをしないので何とかしほしい。」という相談は、ときどき裁判所にあります。
 そのとき、受付の裁判所書記官はこう尋ねると思います。「その場合は自分で強制執行の申立てをしないといけません。債務者は何か財産を持っていますか?」と。

 強制執行とは、債務者の財産を強制的にお金に換えて(換価)、そこから回収をする手続の総称です。強制執行をする債務者の財産が土地なのか預貯金なのか、財産の種類によって申立ての仕方も違うし手続の流れも違います。そのため、まずは債務者が有するどの財産に強制執行するのかを決めなければなりません。

 また、どの財産に対して強制執行するのかを決める大前提として、債務者がそもそも何かしら換価可能な財産を持っているのか否か、債権者自身が調べる必要があります。

 逆から言えば、債務者に何も財産がなければ強制執行はできません。「それでは泣き寝入りするしかないのか。」と声を荒らげる債権者の方もいますが、財産がなければ結果的にはそうならざるをえません。

主な強制執行の種類

 対象とする財産によって大きく分けると、1不動産執行、2債権執行、3動産執行があります。

1不動産執行

 いわゆる「競売」手続のことです(法律上は「きょうばい」ではなく「けいばい」と読みます。)。
 競売の中でも、抵当権等の担保権に基づく競売を「担保不動産競売」、判決等の債務名義に基づく競売を「強制競売」と分けて呼びます。

 債務者が所有する不動産を強制的に売却して換価し、その売却代金から配当を受けて債権を回収することになります。不動産は一般に高額ですので、債務者が不動産を所有していれば債権の回収可能性は高いと言えます。

 しかし、その物件に抵当権が付いている場合、勝訴判決等に基づき強制競売の申立てをした債権者よりも、抵当権者の方が優先的に配当を受ける権利があります。さらに、債務者が税金を滞納していた場合、その租税債権者(市町村や税務署など)も優先権があります。
 そのため、このような場合は、せっかく競売の申立てをしても、勝訴判決をとった債権者まで配当が回ってくる可能性は低く、実務上はあまり実効性がないこともあります(なお、申立人に配当がいく見込みがない場合は、職権で競売手続を途中で取り消してしまうこともあります(無剰余取消)。)。

 この点の詳細は、コラム「競売手続における配当順位」及びコラム「競売手続における無剰余」にて詳しく紹介していますので、是非一度ご覧ください。

不動産執行の費用と手間

 競売申立てにかかる主な費用は次のとおりです。高額の予納金が必要になることがマイナスの特徴です。

① 申立手数料(収入印紙) 4000円(請求債権1個の場合)
② 郵便切手        裁判所ごとの基準による(不要の場合もあり)
③ 予納金         60万円~(請求債権額2000万円までの場合。裁判所ごとの基準による。これは東京・千葉地裁などの例)
④ 登録免許税       確定請求債権額の1000分の4の額
               (※本来は計算の過程で端数処理をするので概算額になります)

 競売手続にかかる期間は、裁判所や対象物件ごとに大きく異なってきますが、一般的には配当まで終了するのに1年以内という案件が最も多いと思います。

 競売の申立てには高額の予納金を収める必要があることなどから、実務上は金融機関が抵当権を実行して債権回収をするために利用することがほとんどで、一般個人の方が少額の債権回収をするために利用することは決して多くはありません。

 ただし、前述したように不動産は一般的に高額で債権回収可能性は高いですので、相手方が不動産を所有しているのであれば検討する価値は十分にあるでしょう。ちなみに、競売手続の中で不動産が売却された場合、当初提供した予納金は、その売却代金の中から最優先で配当(返還)されます。

2債権執行

 実務上は、債務者の預金や給料を差し押さえたりすることが多いです。また、債務者が自営業者であれば、売掛債権を差し押さえたりすることもあります。
 もう少し正確に言うと、預金の場合は銀行からお金を返してもらう権利である「預金債権」、給料の場合は会社からお金をもらう権利である「給料債権」を差し押さえるので、それぞれ債権執行手続によることになるのです。

 もちろん、申立人が、債務者が有するどういった債権を差し押さえるかを決めなければならないことは前述のとおりです。債権執行は(不動産執行と比べて)費用もかからず簡便なメリットはありますが、この債権の特定が難しい場合もあるというデメリットもあります。

 債務者の預金を差し押さえる場合は、預金口座のある銀行を支店名まで特定する必要があります(さすがに口座番号までは不要です。)。また、差し押さえた時点で預金が0円ないし少額であってもそこで当該手続は終了です。

 債務者の給料を差し押さえる場合は、勤務先を特定する必要があります。また、給料は債務者の生活にも不可欠なため、原則として毎月の給与額の4分の1までしか差し押さえ(回収)ができません。さらに、給料を支払っている勤務先会社の協力も必要ですし、そもそも勤務先を退職してしまったら給料自体がないことになりますので、そこで差し押さえは終了になってしまいます。

債権執行の費用と手間

 費用については、別のコラム「債権執行の質問(手続全般編)」をご覧ください。

 手続にかかる期間については、裁判所としても手続の遅れによって執行不能となることは避けたいので、問題のない(補正等のない)事件は速やかに差押命令を発令します。
 そのため、申立てから発令までは数日から1週間程度の間になされることが多いと思います。

 ところで、発令後、そこから実際に債権の回収が完了するまでの期間は別の問題です。
 債権者自らが取り立て交渉をしなければならない場合もあるでしょうし、給料等を差し押さえた場合は、毎月少額ずつしか回収できないため、請求債権額によっては回収完了までには相当程度の期間がかかることもありえます。

 そういった点から、債権執行は、比較的少額の債権の場合や、第三債務者の協力や支払いが期待できる場合(例えば金融機関,大手の法人、官公庁などの場合)などには特に有効な方法となりうるでしょう。
 また、目立った資産のない債務者であっても預金口座の1つや2つは通常有していますので、まずは債権執行をしてみるという検討も必要です。
 

 なお、債権執行手続ついては,以下のコラムがQ&A方式になっていて解り易いと思います。是非一度ご覧ください。
  コラム「債権執行の質問(手続全般編)」
  コラム「債権執行の質問(預金編)」
  コラム「債権執行の質問(給料編)」
  コラム「債権執行の質問(執行費用その他編)」

3動産執行

 動産の概念は広いですが、一般的には家財道具などをイメージしてもらえばよいと思います。現金も動産に入ります。動産を換価して、その代金を債権者に配当する手続になります。

 動産執行で特徴的な点は、不動産執行や債権執行と異なり、申立て時に執行の対象物を特定するのではなく、強制執行する場所(=差し押さえるべき動産が所在する場所)を特定することです。
 債務者がどのような動産を有しているかなど普通はわかりませんので、当然と言えば当然のことです。通常は債務者の住所地を指定することになります。

 さて、結論的には、動産執行はあまり効を奏さないことが少なくありません。
 一般的に家財道具などの動産類はほとんど値が付きませんし、そもそも差し押さえを禁止されている動産が非常に多岐に渡ります。例えば、一般的な大きさのテレビや冷蔵庫、エアコンなどは債務者の生活必需品として差し押さえ禁止にあたります。現金であれば66万円までの現金は差し押さえ禁止です。

 そうすると、請求債権額にもよりますが、高額な美術品や高級ブランド品、その大きさや数量などから差押え禁止の除外とされる家具・家電類でもない限り、実効性がないことも少なくないでしょう。

 なお、動産執行は、執行官が債務者の住居等までいきなり訪問するため(強制的に解錠も可能です)、債務者に対する心理的威嚇効果は大きいものになります。その効果のみを目的とした利用方法が正しいかどうかはさておき、債務者にプレッシャーを与え、それが任意の交渉・弁済等に繋がることも十分あります。動産執行はこの点からの検討も必要です。 

動産執行の費用と手間

 動産執行の申立ては、裁判所ではなく執行官に対してすることになりますが、その際に予納金が必要になります。また、場合により解錠技術者の費用も必要になります。一般的には3~5万円程度はかかるところです。
 日数的には、民事執行規則11条の規定(「やむを得ない事由がある場合を除き,申立てがあった日から1週間以内の日を執行する日時と定める」旨の規定)があるため、それほど時間のかかることは通常ありません。

(補足)自動車執行

 裁判所勤務時代、窓口で「債務者には何か財産がありますか。」と尋ねると、「自動車を持っている。」という返答がよくありました。

 確かに自動車は財産です。不動産競売と同様、売却して債権を回収する手続(自動車競売)があります。
 しかしながら、自動車競売の申立ての場合も予納金が必要(10万円程度)であり、また競売手続内での自動車の査定価格は非常に低額になることがほとんどです(中古車市場価格よりさらに低いことが通常です。)。
 そのため、新車やそれに近い状態の車、高級外車等でないと債権の回収は期待できないため、実務上は自動車競売の申立ては少ない件数にとどまっています。
 ただし、動産執行同様に、日常的に利用する自動車を差し押さえることにより債務者にプレッシャーを与え、任意の交渉・弁済等に繋がることも十分あります。

 なお、自動車執行の詳細は、コラム「自動車執行(自動車競売)の手続について」をご覧ください。

流山パーク司法書士事務所にご相談ください

 債権を回収するためには、裁判で勝訴すること自体よりも、その後の強制執行など実際の権利実現手続の方がよっぽど大変なことも多いです。
 それだからこそ、手続を熟知した専門家に依頼することも大切ですが、強制執行手続は、訴訟と違い、申立て後は原則として裁判所に出頭することなく進行する手続です。そのため、不動産執行や債権執行手続において、わざわざ弁護士を代理人として申立てをするケースは多くなく、司法書士に申立書等の書面作成を依頼することが費用対効果の面からも優れています。

 当事務所では、訴訟手続から各種保全手続・執行手続のご相談、書類作成等を承っております。少しでもご心配な点があれば、まずは当事務所にご相談ください。
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以 上

 合わせて強制執行の費用と手間を回避債権回収のページもご覧ください。

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